
ツーホイールズライフ
こんにちは。ツーホイールズライフ、運営者の「S」です。
スズキのGSR400、400ccクラスとは思えない迫力のあるデザインと、パワフルな4気筒エンジンが魅力的なバイクですよね。中古市場でも人気ですが、いざ探してみると「前期型」と「後期型」があることに気づくと思います。
「GSR400の前期と後期の見分け方が知りたい」「馬力やメーター、ABSに違いがあるって本当?」「型式がGK7DAとかGK7EAとか言われても分からない…」そんな疑問を持っている方も多いんじゃないでしょうか。
見た目がそっくりなだけに、O2センサーの有無や細かい違いを見つけるのは難しいかもしれません。でも、両者には決定的な違いがいくつかあり、それを知らずに選ぶと「思ったよりパワーがなかった」「欲しかった機能が付いていなかった」なんてことになるかも…
この記事では、GSR400の前期型・後期型の見分け方について、誰でも簡単に判別できる決定的なポイントから、中古車選びで注意したい点まで、分かりやすく解説していきますね。
記事のポイント
- 前期型と後期型を100%見分ける決定的な方法
- 馬力やメーターなど、主要な性能と装備の違い
- ABSやO2センサーの有無による判別ポイント
- 中古車選びでどちらのモデルが自分に合っているか
GSR400 前期・後期 見分け方の結論
まずは結論から。GSR400の前期型と後期型を見分けるための、最も確実で信頼性の高い方法を、理由とともに深掘りしていきます。これらのポイントを押さえれば、中古車屋さんで実車を見るときも、ネットで情報を探すときも迷わなくなりますよ。
決定的違いは型式(GK7DA・GK7EA)

ツーホイールズライフ
まず、GSR400の前期型と後期型を100%の精度で、法的に見分ける方法は「型式」の確認です。これはもう、疑いようのない決定的な違いですね。
バイクの「型式」は、車検証(自動車検査証)に必ず記載されていますし、車体のフレーム(だいたいハンドルの付け根、ステアリングヘッドパイプと呼ばれる部分)にも打刻されています。
- 前期型 (2006〜2008年): 型式 BC-GK7DA
- 後期型 (2009〜2014年): 型式 EBL-GK7EA
この違いは、単なる記号の違いではありません。この先頭の「BC-」や「EBL-」というのは、そのバイクがクリアした国内の排出ガス規制の識別記号なんです。
前期の「BC-」は平成14年規制、後期の「EBL-」はそれよりさらに厳しい平成19年規制に対応している証拠です。
GSR400の前期・後期のすべての違いは、この「規制対応」という大きなハードルを越えるためにスズキが行った、技術的なアップデートから生まれているんです。
判別のポイント
中古車を見に行ったら、まずは車検証の「型式」欄をチェックさせてもらいましょう。それが一番早くて確実です。
BC-GK7DAなら前期型、EBL-GK7EAなら後期型。これだけ覚えておけばOKです。
馬力の違いは? 53psと61ps
エンジン性能、特に「馬力」の違いも非常に大きなポイントです。ここで本当に面白いのが、排出ガス規制が厳しくなった後期型の方が、馬力が大幅にアップしているという、一見すると逆説的な事実。
- 前期型 (BC-GK7DA): 最高出力 53 ps / 11,000 rpm
- 後期型 (EBL-GK7EA): 最高出力 61 ps / 12,000 rpm
なんと、8馬力(約15%)も向上しています。通常、規制が厳しくなると、排気の抜けが悪くなる(触媒を増やすため)などで、パワーダウンすることが多いんですが、GSR400は違いました。
これはもう、スズキの技術者たちが規制対応を単なる「対応」ではなく、「エンジン性能を再構築する絶好の機会」と捉えた結果なんだろうな、と私は想像しています。
おそらく、燃料マップ(フューエルインジェクションのセッティング)の全面的な見直しはもちろん、カムシャフトのプロファイル(バルブを開閉するタイミングや量)を変更したり、大型触媒を入れつつも高回転での排気効率を最適化したりと、かなり大掛かりな改良が加えられたんじゃないでしょうか。
結果として、最大トルク(グッと押し出す力)はほぼ同じまま、ピークパワーの発生回転数を1,000rpm引き上げ、より高回転まで回して楽しむ、スポーティーなエンジン特性へと進化したのが後期型なんですね。
メーターとギアポジションの有無

ツーホイールズライフ
型式の次に、誰でも簡単に、そしてほぼ確実に見分けられるのが「メーターの機能」です。
後期型(EBL-GK7EA)のメーターには、「ギアポジションインジケーター」が標準で搭載されています。
イグニッションキーをONにしたとき、メーターの液晶部分に「N(ニュートラル)」や「1」「2」といった、今入っているギアの段数が表示されれば、それは後期型です。
一方、前期型(BC-GK7DA)のメーターには、この機能がありません。燃料計や時計、トリップメーターはありますが、ギアポジションは表示されないんです。
今となっては多くのバイクに付いている機能ですが、当時は400ccクラスで標準搭載されているのは結構珍しかったかもしれません。特にバイク初心者の方や、「今何速だっけ?」となりがちな(私もよくやります)ライダーにとっては、非常にありがたい便利な機能ですよね。
メーターはバイクのECU(コンピュータ)と密接に連携している高価な部品です。ウインカーやバイザーのように、オーナーさんが後から簡単に交換(スワップ)する可能性は極めて低いです。
そのため、このギアポジションの有無は、型式確認に次いで信頼できる見分け方と言えますね。
ABSはオプションか標準装備か
安全装備であるABS(アンチロックブレーキ)の有無も、見分け方の一つです。ただし、これには少し「罠」というか、注意点があるので気をつけてください。
- 後期型 (EBL-GK7EA / 2009年〜): ABSが標準装備になりました。
- 前期型 (BC-GK7DA):
- 2006年式(最初期): ABS設定なし
- 2007年〜2008年式: ABSがオプション装備として追加
この事実から、以下のようなロジックが成り立ちます。
- ABSが「付いていない」GSR400 → 100%前期型(特に2006年式)と断定できます。
- ABSが「付いている」GSR400 → これだけでは判別不能です。(2007〜08年の前期オプション仕様か、2009年以降の後期標準仕様か分からないため)
ABSの有無は、ブレーキキャリパー周りや、ホイールの根本にギザギザの歯車のような「センサーリング」があるかどうかで視覚的に確認できます。
もしABSが「ある」場合は、「じゃあ、これは前期かな?後期かな?」と、型式やメーターなど、他の方法で最終確認する必要がある、ということですね。
中古車市場では、やはりABS搭載モデルの方が人気がある傾向ですが、その分、価格が少し高くなることもあります。逆に、ABS非搭載の前期型(特に2006年式)は、価格を少しでも抑えたい人にとっては狙い目のモデルと言えるかもしれません。
O2センサーの有無で判別可能
これも信頼性が高い物理的なチェック方法です。ただし、「純正マフラー(エキゾースト)」であることが前提という条件がつきます。
後期型(EBL-GK7EA)は、厳しい平成19年規制をクリアするため、排出ガス中の残存酸素濃度を測る「O2センサー」を使った、より精密な燃料制御(クローズドループ制御)が必須になりました。
このO2センサーが、排気ガスの状態をリアルタイムでECU(コンピュータ)にフィードバックし、常に最適な燃料噴射量を調整しているわけです。
- 後期型 (EBL-GK7EA): 4本のエキパイ(排気管)が1本にまとまる「集合部」あたりに、O2センサー(配線が付いた突起物)が装着されています。
- 前期型 (BC-GK7DA): 純正マフラーには、このO2センサーも、それを取り付けるための穴(ボス)もありません。
車体の下を覗き込んで、マフラーの途中にセンサーが付いているか確認するのも、有効な見分け方の一つです。
社外マフラー装着車は要注意!
中古車の場合、マフラーが社外品に交換されていることも多いですよね。ここで注意が必要なのは、前期型(BC-GK7DA)用として売られている社外マフラーでも、後期型と共通化するためにO2センサーの取り付け穴(ボス)が用意されている製品がある、という点です。
その場合、前期型オーナーはセンサー穴を塞ぐ「メクラ蓋(ボルト)」で穴を塞いで使用します。逆に、後期型に前期型用(穴なし)のマフラーを付けるのは、ECUの制御がおかしくなる可能性が高いので基本的にNGです。
あくまで「純正マフラーなら」という条件付きの確認方法だと覚えておいてくださいね。
実践!GSR400 前期・後期 見分け方
ここまでは、型式やメーターといった信頼性の高い見分け方を見てきました。ここからは、よく「違い」として噂されるけれど、実は中古車選びではあまりアテにならない識別点や、スペック表では見えにくい「乗り味」の違いについて、S目線で解説していきます。

ツーホイールズライフ
ショートバイザーは信頼できる?
「メーターの上についている小さなカウル(ショートバイザー)が後期型」という話もよく聞きます。
確かに、2009年からの後期型(EBL-GK7EA)には、このショートバイザーが標準装備となりました。メーター周りのデザインを引き締め、わずかながら整流効果も狙ったものかなと思います。
ですが、これはただのプラスチック部品で、ボルトで留まっているだけです。
前期型に後から純正品を取り付けることも簡単(部品が手に入ればですが)ですし、逆に後期型から外すこともできます。また、GSR400は社外品のスクリーンやビキニカウルも色々出ていますから、それに交換されているケースも多いです。
そのため、ショートバイザーの有無を識別の決定打にするのは危険です。あくまで「そういう傾向がある」程度に留めておいて、必ず型式やメーターで最終確認するのが賢明ですね。
ウインカーや車体色の違い
これらは、残念ながらモデルを識別する根拠としては、ほぼ信頼性ゼロと言っていいかもしれません。
例えば「クリアウインカーだから後期」といった情報もあるかもしれませんが、ウインカーはバイクのカスタムパーツとして最も交換されやすい部品の一つです。転倒で割れてしまったついでに、社外の小型LEDウインカーに交換する、なんていうのは定番中の定番カスタムですよね。
車体色(カラーリング)も同様です。スズキはほぼ毎年カラーチェンジを行っていますし、2014年の最終モデルのカラーであれば後期型と分かりますが、年式が近いと似たような色もあります。
何より中古車の場合、前オーナーがカウルを自家塗装したり、ラッピングシートで色を変えたりしている可能性もゼロではありません。GSR400はカスタムベースとしても人気があったバイクですから、外装は「十人十色」と考えておいた方がいいでしょう。
これらを根拠に「前期だ!」「後期だ!」と判断するのは、全くおすすめできません。
エンジン特性の違い(高回転型)

ツーホイールズライフ
これは「見分け方」ではありませんが、前期と後期でどちらを選ぶか、という「選び方」において非常に重要なポイントです。
先ほど、馬力が 53ps → 61ps に上がったと書きましたが、これは「乗り味」に直結します。
- 前期型 (53ps): 最大トルクの発生回転数も後期よりわずかに低い(資料による)とされ、比較的、中回転域(ミッドレンジ)のトルク感を活かして走るキャラクターと言われています。街中でのストップ&ゴーや、のんびりツーリングする際に、ギクシャクしにくく扱いやすい特性かもしれません。
- 後期型 (61ps): ピークパワーの発生が12,000rpm。前期型よりも明らかに高回転までエンジンを回すことをライダーに要求し、それにきっちり応えてくれる、よりスポーティーで刺激的なエンジン特性です。高速道路での合流や追い越し、峠道(ワインディング)で積極的に走りを楽しみたいライダーに向いていると言えますね。
どちらが良い・悪いではなく、これはもう「好み」の世界です。
ご自身のバイクの使い方(街乗りメインか、ツーリングか、スポーツ走行か)を想像して、「どちらのエンジン特性が自分に合っているかな?」と考えて選ぶのも、バイク選びの醍醐味かなと思います。
重量や規制対応の違いまとめ
最後に、細かいスペックの違いもまとめて見てみましょう。GSR400の前期型と後期型は、エンジン性能だけでなく、装備の充実化に伴う重量増という側面もあります。
後期型(EBL-GK7EA)は、ABSの標準装備化や、厳しい規制に対応するための触媒の大型化などにより、車両重量が重くなっています。
| 仕様項目 | 前期型 (Zenki) | 後期型 (Kouki) |
|---|---|---|
| 製造年 | 2006年 - 2008年 | 2009年 - 2014年 |
| モデルコード (型式) | BC-GK7DA | EBL-GK7EA |
| 排出ガス規制 | 平成14年 (2002年) 規制 | 平成19年 (2007年) 規制 |
| 最高出力 (PS / rpm) | 53 ps / 11,000 rpm | 61 ps / 12,000 rpm |
| 最大トルク | 4.0 kg-m / 10,000 rpm | 4.0 kgf⋅m / 10,000 rpm |
| O2センサー (純正) | 無し | 有り |
| ギアポジション | 無し | 有り |
| ABS | 無し (2006), オプション (2007-08) | 標準装備 |
| 車両重量 (※) | 185 kg (乾燥) | 215 kg (装備, ABS) |
※乾燥重量と装備重量の違い
表の重量には注意が必要です。前期型は「乾燥重量」(ガソリン、オイル、冷却水などを含まない重さ)、後期型は「装備重量」(すぐに走行可能な状態の重さ)で記載されていることが多いです。
そのため、単純に30kgも重くなったわけではありませんが、ABSユニットや大型触媒のぶん、後期型の方が数kg〜十数kg重いのは確かです。
とはいえ、GSR400の魅力である「400cc離れした大柄な車体」は共通。この重量感が、高速道路などではむしろ安定感につながっているとも言えますね。取り回しでは少し差が出るかもしれませんが、走り出してしまえば、その重さが安心感になることも多いですよ。
中古車選びでの注意点

ツーホイールズライフ
さて、これからGSR400の中古車を探そうという方へ。ここまでの情報を踏まえて、いくつか注意点を。
まずは「車検証」を必ず確認させてもらうこと。これが一番です。遠方で現車確認できない場合でも、型式(BC-GK7DAかEBL-GK7EAか)だけは販売店に電話やメールで確認しましょう。
「GSR400 ABS」という名前で売られていても、それが前期のオプション(2007-08年式)なのか、後期の標準装備(2009年式以降)なのかで、エンジン性能(53psか61psか)もメーターの機能も全く違います。この違いは大きいですよね。
価格と状態の総合的な確認を
中古バイクの価格は、年式、走行距離、車両の状態(傷、サビ、消耗品の残り具合)によって大きく変動します。ここで紹介した情報は、あくまでモデルを識別するための一般的な目安です。
特にエンジンの状態(異音がないか、オイル漏れはないか)や、足回り(フォークのオイル漏れ、ブレーキの効き)のコンディションは、前期・後期に関わらず個体差が大きいです。
また、GSR400は(前期・後期問わず)「イモビライザー」(盗難防止装置)を搭載しています。このイモビライザーの鍵(特にマスターキーと呼ばれる赤い鍵)をすべて紛失してしまうと、最悪ECUごと交換という高額な修理になる可能性があります。購入時には、スペアキーの有無もしっかり確認しておくと安心ですね。
購入の際は、信頼できるバイクショップでよく相談するか、整備記録がしっかり残っている車両を選ぶことを強くおすすめします。
最終的な判断は、ご自身の目で実車を確認し、可能であればエンジン音を聞かせてもらい、専門家の意見も聞いた上で慎重に行ってくださいね。
GSR400 前期・後期 見分け方の総括
GSR400の前期型と後期型の見分け方、いかがでしたでしょうか。
見た目がそっくりな両者ですが、その中身は「排出ガス規制対応」という大きな節目を境に、エンジン性能も装備も大きく進化した、実質的に「別世代」のバイクだということが分かってもらえたかなと思います。
最後に、これだけは押さえておきたい「識別チェックリスト」をもう一度まとめておきます。
GSR400 識別チェックリスト(これだけでOK)
- 最優先:車検証の「型式」をチェック!
- 「BC-GK7DA」 → 前期型 (53ps)
- 「EBL-GK7EA」 → 後期型 (61ps)
- 次点:キーONで「メーター」をチェック!
- ギアポジション表示が「無い」 → 前期型
- ギアポジション表示が「有る」 → 後期型
中古車屋さんに行ったら、まずはこの2点を確認すれば、ほぼ間違いなく判別できるはずです。
前期型には前期型にしかないオリジナルの魅力(と、価格的な魅力)があり、後期型にはスズキの技術者が規制を乗り越えて生み出したパワーと先進機能があります。
この記事が、あなたのバイク選びの助けになれば、Sとしてこれ以上嬉しいことはありません。ご自身の好みや予算、使い方にピッタリ合った、素敵なGSR400ライフを送ってくださいね。
以上、ツーホイールズライフの「S」でした。