
出典:ハーレーダビッドソン公式
こんにちは。ツーホイールズライフ、運営者の「S」です。
今、バイク業界で最も注目を集めている一台といえば、やはりハーレーダビッドソンX500ではないでしょうか。みなさんも「本当にハーレーらしくは走れるのか?」「中型免許のX350と何が違うのか?」といった疑問を持ちながら、この記事に辿り着いたのだと思います。ネット上で情報を探していると、その評価や評判について賛否両論、様々な意見が飛び交っていますね。特に、長年のファンが愛する伝統的な空冷Vツインとは異なる、並列2気筒エンジンに対する違和感や、カタログ数値以上に高いとされるシート高による足つきの不安、そして実際の燃費や最高速といったスペック面での実力を気にされている方が多い印象です。
また、同時にデビューした兄弟モデルであるX350との決定的な違いや、購入後のカスタムの楽しみ方、維持費についても詳しく知りたいところでしょう。今回は、そんな皆さんが抱える数多くの疑問や不安に対して、いちライダーとしての視点から、忖度なしの率直な感想をまとめてみました。カタログや公式サイトには載っていない、リアルな「感覚」をお伝えします。
記事のポイント
- 伝統的なハーレーとは一線を画す、360度クランクエンジン独自の官能的なサウンド特性
- 長距離ツーリングでも疲労を感じにくい、驚くほどの振動の少なさと快適性
- 身長160cm前後のライダーが直面する足つきの現実的な課題と、車重の軽さによるリカバリー法
- 兄弟車X350と比較した際のキャラクターの決定的な違いと、あなたに合った選び方のポイント
ハーレーX500の評価と走行性能の真実
まずは、オートバイとしての根幹である「走り」の部分について、徹底的に深掘りしていきましょう。ハーレーダビッドソンといえば、「ドコドコ」という荒々しい鼓動感や、低回転から湧き上がる強烈なトルクをイメージする方が多いと思いますが、X500はその期待を良い意味で裏切る、非常に現代的で洗練されたキャラクターを持っています。実際にスロットルを回したときに感じるエンジンのフィーリング、街乗りでの扱いやすさ、そして高速道路での挙動など、カタログスペックの数字だけでは決して分からない感覚的な部分を中心に、詳細にお話しします。
- トリプル風なマフラー音と排気音の魅力
- X500の振動特性とツーリング快適性
- X500の最高速と高速道路での実力
- 水冷エンジンの排熱メリットと熱対策
- X350との違いやスペック比較を検証
トリプル風なマフラー音と排気音の魅力

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X500のエンジンを始動して最初に驚かされるのは、その排気音の質とキャラクターです。もしあなたが、ハーレー伝統の不規則な「ドコドコ(ポテトサウンド)」というアイドリング音を期待しているなら、正直なところ拍子抜けしてしまうかもしれません。しかし、実際にギアを入れて走り出し、回転数を上げていくと、このエンジンが奏でる音が非常に気持ち良く、中毒性があることに気づくはずです。
X500に搭載されている水冷並列2気筒エンジンは、ピストンが同時に上下する360度クランクを採用していると言われています。この構造は、かつての英国車や一部の国産旧車にも見られた形式で、独特の音響特性を持っています。アイドリング付近では「ボボボボ」という低く太い音を響かせますが、スロットルを開けて回転を上げていくと、その音は劇的に変化します。まるで3気筒(トリプル)エンジンのような、粒の揃った連続的なサウンドへと昇華していくのです。
具体的には、4,000回転を超えたあたりから「ズバババ」という重厚な低音が収束し、高回転域では「クォーン」という甲高く艶のある音色が顔を出します。このサウンドの変化は、アメリカンクルーザーというよりも、欧州のスポーツロードスターに近い、非常に洗練された印象を受けます。トンネル内などで加速した際に響くエキゾーストノートは、ライダーの聴覚を刺激し、「もっと回したい」という衝動を駆り立てます。従来のVツインのような「鼓動」ではありませんが、機械としての精度の高さを感じさせる、スポーティで官能的なサウンドチューニングが見事に施されていると言えるでしょう。
音質のポイント
従来のVツインのような「ドコドコ」とした鼓動感はありませんが、高回転まで回して楽しめる、スポーティで官能的な「トリプル風」のサウンドチューニングが施されています。音量自体は車検対応レベルで静かですが、音質には色気があります。
X500の振動特性とツーリング快適性
長距離を走るツーリングライダーにとって、エンジンや車体からの振動は、疲労の蓄積に直結する極めて重要な要素ですよね。X500の振動特性に関しては、結論から言うと非常に優秀で快適だと感じました。ハンドルバーやステップ、そしてシートから伝わる不快な「ビリビリ」とした高周波の振動が、驚くほど抑え込まれているのです。
一般的な並列2気筒エンジン、特にバランサーの設計が甘いモデルだと、高速道路などで一定の回転数を維持した際に、手足が痺れるような微振動が発生しがちです。しかしX500は、バランサーシャフトの効果や、エンジンマウントの設計(おそらくラバーマウント等の工夫)が適切に機能しているおかげか、回転数を上げても振動がリニアに増幅せず、一定レベルで収束するという素晴らしい特性を持っています。
例えば、時速100kmでの巡航時においても、ミラーが振動でブレて後方が見えなくなるようなことはありません。グリップを握る手にも不快な痺れが残らず、これなら一日中走り続けても、身体的なダメージは最小限に抑えられるでしょう。「ハーレーの味=激しい振動」と考えているコアなファンの方には少々物足りなく感じるかもしれませんが、純粋にツーリングバイクとしての完成度という視点で見れば、このエンジンのスムーズさと静粛性は、ロングライドの相棒として大きな武器になります。景色を楽しみながら淡々と距離を稼ぐ、そんな大人の旅に最適な特性です。
X500の最高速と高速道路での実力
500ccという排気量(厳密には499.5cc)に対して、「大型バイクとツーリングに行ったときについて行けるのか?」「高速道路での追い越しに余裕はあるのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。結論から申し上げますと、日本の法定速度内、あるいは実勢速度の範囲内であれば、動力性能に不足を感じることは全くありません。
このエンジンの最大出力は47HP(35kW)ですが、特筆すべきはそのトルク特性です。フラットなトルクカーブを描いており、低回転から高回転まで谷間なくスムーズに回るため、6速トップギアに入れたままでも、スロットルを捻るだけで必要な加速力を得ることができます。追い越し加速の際も、わざわざギアを2段落としてエンジンを唸らせる必要はなく、そのままのギアか1段落とす程度で、ストレスなく先行車をパスすることが可能です。
また、車体の剛性バランスも非常に優れています。フロントに採用された極太の倒立フロントフォーク(インナーチューブ径50mm!)のおかげで、直進安定性は抜群です。高速道路での横風や、路面の継ぎ目を通過した際でも、車体が不用意に揺すられるような不安感は皆無で、どっしりと路面を捉え続けてくれる安心感があります。ネイキッドスタイルなのでライダーは風圧を受けますが、車体自体がビシッと安定しているため、恐怖感はありません。エンジン自体にはまだまだ余力があり、最高速アタックをするようなバイクではありませんが、グランドツアラー的な長距離移動も十分にこなせる高いポテンシャルを秘めています。
水冷エンジンの排熱メリットと熱対策

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個人的に、X500を所有する上で最大のメリットの一つだと思っているのが、この「水冷エンジン」による優れた熱マネジメントです。空冷大排気量のハーレーに乗ったことがある方なら痛いほど分かると思いますが、日本の真夏の渋滞は、空冷エンジンにとってもライダーにとっても、まさに灼熱地獄です。股下から上がってくる熱気は、時に低温火傷のリスクすらあり、エンジンを守るために強制的に路肩で休憩せざるを得ないこともあります。
その点、X500は完全な水冷化によってエンジン温度が常に適正に管理されています。もちろん、夏場の信号待ちなどでラジエーターファンが回れば、足元に温かい風は流れてきますが、空冷ビッグツインのような「太ももが焼けるような熱さ」や「エンジンが壊れそうな熱気」とは無縁です。これは、日本の高温多湿な過酷な夏にバイクに乗る上で、精神的な余裕に大きく繋がります。
「渋滞にハマっても大丈夫」「エンジンが熱ダレしてパワーダウンしない」という安心感は、特にバイクに乗り慣れていない初心者ライダーや、都市部での通勤・通学に使用するユーザーにとって、カタログスペックには表れない極めて大きな恩恵です。ジーンズなどの軽装(※安全性は考慮しつつ)でも、熱さを気にせず気軽に乗れる点は、X500の実用性の高さを象徴しています。
X350との違いやスペック比較を検証

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X500の購入を検討する際、必ずと言っていいほど比較対象になるのが、同時に登場した中型免許(普通自動二輪)クラスの「X350」です。外観のシルエットは似ていますが、中身や乗り味は全くの別物と考えた方が良いでしょう。どちらを選ぶべきか迷っている方のために、決定的な違いを解説します。
| 比較項目 | ハーレーダビッドソン X350 | ハーレーダビッドソン X500 |
|---|---|---|
| エンジン特性 | 高回転型でビシビシ回してパワーを絞り出す楽しさがある | トルク重視型で、低回転から滑らかに加速する余裕がある |
| 推奨シーン | 街乗り、峠道でのスポーツ走行、ショートツーリング | 長距離ツーリング、高速道路を使った移動、タンデム走行 |
| デザイン | フラットトラッカー(XR750)をオマージュした角ばったタンク | モダンなロードスター(スポーツスター要素あり)の丸みを帯びたタンク |
| 所有感 | 軽快でカジュアルな「相棒」感 | 大型バイクらしい車格と質感を備えた「所有欲」を満たす存在 |
X350は、エンジンをガンガン回してパワーバンドを維持しながら走る、少しやんちゃでエキサイティングな「遊び」の要素が強いバイクです。振動もX500よりはダイレクトに伝わってきます。対してX500は、排気量の余裕を生かして、トルクでゆったりと、かつシルキーに走る「大人の」バイクという印象です。大型二輪免許をお持ちであれば、高速道路での追い越し時の余裕や、車体の質感、そして「大型バイクに乗っている」という満足感の面で、やはりX500の方に分があると感じます。維持費(車検の有無)の違いはありますが、ツーリングメインであればX500の快適性は価格差以上の価値を提供してくれます。(出典:Harley-Davidson Japan『X500』公式製品ページ)
ハーレーX500の評価と足つきやカスタム
記事の後半は、購入を最終決定する上で避けては通れない「実用性」の部分にフォーカスします。特に私たち日本人の平均的な体格だと最も気になる「足つき性」や、日々の取り回しに影響する「重量」、そして購入後の楽しみである「カスタム事情」について、忖度なしのリアルな情報をお届けします。
- X500の足つき性とシート高の懸念点
- 取り回しに影響する重量のインプレ
- X500のカスタムパーツと今後の展望
- 評判から見る故障リスクと維持の注意点
- 総合的なハーレーX500の評価まとめ
X500の足つき性とシート高の懸念点

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正直に申し上げますと、ここがX500の購入を迷わせる最大のハードルであり、最も注意すべきポイントかもしれません。メーカー公表のシート高は820mmです。これだけ見ると「最近のネイキッドやアドベンチャーなら普通の高さでは?」と思うかもしれませんが、実際に跨ってみると、数字以上に高く、足つきが悪く感じることがあります。
その主な原因は、シートの幅と形状にあります。X500のシートは座り心地を重視して幅広に設計されており、サイドカバーの張り出しもあるため、ライダーは脚を真っ直ぐ下に下ろすことができません。結果として、少し蟹股気味に足を出さざるを得ず、これが足つき性を悪化させています。身長170cm以上あれば両足のかかとが浮く程度で問題ありませんが、身長160cm〜165cmの方だと、両足接地はかなり厳しく、つま先ツンツンか、お尻をずらして片足べったりという状態になる可能性が高いです。
ただし、155cm前後の女性ライダーでも、厚底のライディングブーツを履いたり、サスペンションのプリロードを最弱に調整して沈み込み量を増やしたりすることで、普通に乗れているケースも多々あります。「820mm」という数字だけで諦める前に、必ずディーラーの実車で跨り、サスペンションが馴染んだ状態での足つきを確認することをお勧めします。また、シートの角を削る「アンコ抜き」加工も、数センチの改善効果がある有効な手段です。
足つきチェックの重要ポイント
カタログ数値(mm)だけで判断せず、実際に跨って「太ももがシートの角に当たらないか」「足を下ろす位置にステップが干渉しないか」を確認してください。不安な場合は、購入時にローダウンリンクの導入やシート加工を相談するのも一つの手です。
取り回しに影響する重量のインプレ

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足つきに関しては少々厳しい評価となりましたが、それを強力に補ってくれるのが車体の軽さとバランスの良さです。X500の車両重量(燃料やオイルを含んだ装備重量)は208kgです。これは、300kg超えが当たり前のハーレーダビッドソンのラインナップの中では、驚異的に軽量な部類に入ります。
実際に押し引きをしてみると、重心位置が低く設計されているためか、数値以上に軽く感じられます。ガレージからの出し入れや、狭い駐輪場での切り返しにおいて、「ズシッ」とくる絶望的な重さや威圧感はほとんどありません。たとえ信号待ちで足つきが悪く、車体が少し傾いてしまっても、この軽さなら片足で十分に踏ん張りが効き、リカバリーが可能です。
「立ちゴケ」のリスクは、足つきの悪さと車重の重さが組み合わさった時に最大化しますが、X500の場合は「物理的な軽さ」が足つきの不安を相殺してくれています。Uターンも、ハンドル切れ角が十分に確保されていることと相まって、恐怖感なく行えます。ビッグツインのように「一度バランスを崩したら終わり」というプレッシャーから解放されることは、精神的にも肉体的にも非常に大きなメリットだと言えますね。
X500のカスタムパーツと今後の展望
「ハーレーに乗る楽しみ=カスタム」という図式は、X500にもしっかり継承されています。発売からまだ日が浅い新型モデルであるにも関わらず、Webikeなどの大手パーツ通販サイトや専門店を見ると、既に多くのサードパーティ製カスタムパーツがリリースされており、市場は活況を呈しています。
現状で特に人気が高いのは、積載性を劇的に向上させるリアキャリアやトップケースステー、そして万が一の立ちゴケ時に車体を守るエンジンスライダーやクラッシュバーです。これらはツーリングユースを考えるなら必須級のアイテムでしょう。また、マフラーを交換して、より迫力のあるサウンドや軽量化を追求するユーザーも増えています。
X500のデザインは、特定のスタイルに偏りすぎていない「素性の良いロードスター」です。そのため、セパレートハンドルやバックステップを組んで「カフェレーサー風」に仕上げたり、ブロックタイヤやアップマフラーを装着して「スクランブラー風」にしたりと、オーナーの好みやセンスに合わせて「素材」として自由に料理できる点も大きな魅力です。今後さらにパーツラインナップが増えていけば、自分だけのオリジナルX500を作る楽しみは無限に広がっていくでしょう。
評判から見る故障リスクと維持の注意点
購入を検討する際、どうしても気になるのが「中国生産(QJ Motorとの提携)」という点における品質や故障のリスクではないでしょうか。「すぐに壊れるのではないか?」「パーツ供給は大丈夫か?」という不安の声も耳にします。しかし、現状のオーナーレビューや市場の評判を詳しくリサーチする限り、致命的な初期不良が頻発しているという事実は確認されていません。
搭載されているエンジンは、ベースモデルですでに世界中で使用されている実績のあるユニットであり、水冷化によって熱的な負担も大幅に軽減されています。電装系などの細かいトラブルの可能性はゼロではありませんが、ここで最も重要なのは、このバイクが並行輸入車ではなく、ハーレーダビッドソンジャパンの正規ラインナップモデルであるという事実です。
つまり、全国の正規ディーラーで新車保証(通常3年など)が受けられ、万が一の故障時にもメーカー純正のパーツ供給や、専門メカニックによる修理対応が保証されているのです。これは、怪しい格安輸入バイクとは比較にならない絶大な安心感です。維持費に関しても、燃費はリッター20km〜25km程度とそこそこ良く、タイヤサイズも前後17インチの一般的な規格なので、選択肢も多く安価に交換可能です。ビッグツインの維持費に比べれば、X500は国産ミドルクラスと同等のコストで維持できる、非常に経済的なハーレーだと言えるでしょう。
保証に関する注意
正確な保証期間や適用条件は、キャンペーンや購入時期によって変更される場合があります。購入前には必ずお近くの正規ディーラーで最新の保証内容を確認し、納得した上で契約することをお勧めします。
総合的なハーレーX500の評価まとめ
最後にまとめとして、私なりにハーレーX500というバイクの評価を整理してみます。もしあなたが、「空冷Vツインの鼓動こそがハーレーだ」「鉄の馬のような重厚感が欲しい」と強く願っているのなら、X500は正直おすすめしません。そういった方には、中古のスポーツスターやソフテイルシリーズの方が幸せになれるでしょう。
しかし、「ハーレーというブランドのステータスや世界観には憧れるが、重くて熱くて乗りにくいバイクは嫌だ」「普段は街乗り、休日はツーリングや峠道を快適に楽しみたい」という合理的で欲張りなライダーにとっては、X500はこれ以上ない最適解となります。
360度クランクエンジンが奏でる気持ち良いサウンド、長距離でも疲れない優れた振動特性、そして日本の道路事情にマッチした扱いやすい車体サイズ。これらは、X500が単なる「ハーレーのバッジがついただけの廉価版」ではなく、一台のモーターサイクルとして極めて真面目に作り込まれた良作であることの何よりの証明です。「ハーレーらしくない」という先入観で食わず嫌いをするのはもったいない。ぜひ一度、お近くのディーラーで試乗してみてください。その完成度の高さと、バイク本来の「操る楽しさ」に、きっと驚かされるはずです。
以上、ツーホイールズライフの「S」でした。